レンダリング方式

グローバルイルミネーションを表現する主なレンダリング方式の概要

レイトレーシング法 (Ray tracing)

Whitted 1979
視点から光源までのレイ (光線) を追跡することでレンダリングする手法。
視点から描画する各画素の方向へ直線を伸ばし、物体と交錯する可否を数学的に判定する。照度は光源との方向ベクトルで計算する。
反射と屈折は反射率および屈折率をもとに再帰的に探索を繰り返し、物体との交錯がなくなれば計算は終了する。
視点からの計算なので、画像ピクセル分のレイだけを計算すれば良い。
Whitted のレイトレーシング法の提唱により、ローカルイルミネーションからグローバルイルミネーションへと方法論が進化した。
それまでは分けて考えていた、遮蔽・反射屈折効果・影を統一的に表現することを示したという点でも重要である。
現在ではクラシックレイトレーシング法とも呼ばれている。


分散レイトレーシング法 (Distribution ray tracing)

Cook 1984
レイトレーシング法では、各レイがサーフェスで跳ね返るときの分岐は最大でも、反射と、屈折もしくは透過の 2 本であるために、完全な鏡面反射・完全な屈折・ハードシャドウなどのくっきりしたレンダリング画像しか表現できなかった。
そこで Cook らは、1 本のレイがサーフェスで跳ね返るときに複数のレイを分散して新しく飛ばすことで、ぼやけた反射や屈折・ソフトシャドウを表現することができる分散レイトレーシング法を提案。
またこの手法では、被写界深度・モーションブラーなどのカメラ効果も統一した枠組みで表現することが可能になっている。
通常、分散レイトレーシング法と以下で述べるパストレーシング法はモンテカルロレイトレーシング法とも呼ばれることが多い。


パストレーシング法 (Path tracing)

Kajiya 1984
レンダリング方程式の提案と同時にそのレンダリング方程式の解決として提案された手法。
パストレーシング法では、レンダリング方程式をモンテカルロランダムウォークで解くことにより、各レイがサーフェスで跳ね返るときには 1 本しか反射レイをしないレイトレーシングである。
そのため分散レイトレーシングのように各レイの跳ね返りで指数関数的にレイの本数が増えていくことを抑えることができる。
物体表面での光の乱反射を再現できるが、明暗差が大きいシーンではノイズが出やすい。


ラジオシティ法 (Radiosity)

Cohen 1984、Nishita 1985
伝熱工学の理論を元に光をエネルギーとして捉え、シーン内の物体をパッチ (微小面積) 要素へと分割し、それらパッチ間でエネルギー伝達を行うことにより光輸送の計算を行う。
ラジオシティ法では、レイトレーシング法では表現が難しい柔らかな間接光の表現が可能になっているため、建築物のレンダリングや照明シミュレーションなどの分野で広く使用されている。


双方向パストレーシング法 (Bi-directional Path Tracing)

Lafortune 1993、Veach 1994
視点からのレイトレーシングと光源からのライトトレーシングを組み合わせた手法。
視点からのレイトレーシングの利点である鏡面反射などと、ライトトレーシングの利点であるコースティクス (集光模様) などの両方を表現することが可能。


フォトンマッピング法 (Photon mapping)

Jensen 1993
光をモデル化したフォトンを光源からばらまいてフォトントレーシングによりフォトンマップを作成し、そのフォトンマップに対してレイトレーシング法を適用する手法。
フォトントレーシングでは、光源からフォトンがばらまかれ、フォトンが物体にぶつかった際に、その物体の材質 (反射・屈折・吸収) の反射率を使ってロシアンルーレット法でトレースが続き、ぶつかったところの点をフォトンマップとして格納。
その後レイトレーシングが実行され、輝度に対してはフォトンマップから判定する。
計算量を抑えつつ、物体や媒質の質感や透明感、コースティクスを表現できる。


メトロポリス光輸送 (Metropolis light transport, MLT)

Veach 1997
メトロポリスサンプリングと呼ばれる計算物理学で用いられているモンテカルロ法の、CG レンダリングへの応用である。
メトロポリスサンプリングはマルコフ連鎖モンテカルロ法の基本的なアルゴリズムであり、いわゆる(特に物理学における意味での)モンテカルロ法という分野の開拓となったアルゴリズムである。
メトロポリス光輸送は洗練されたアルゴリズムであり、画像の明るい部分を集中的にサンプルするという非常に効率的なレンダリング手法である。そのため コースティクス などの光が多く当たる部分をノイズなしにきれいにレンダリングすることができる。
そのかわり部屋の隅などの暗い部分はノイズが現れやすい。
これはコースティクスにノイズが出やすい パストレーシング の性質と逆である。
メトロポリス光輸送では、基本は パストレーシングや双方向パストレーシングを用いるが、レイの各サンプリングパスを毎回最初から全部計算しなおすのではなく、前回のサンプリングパスの一部に変異もしくは摂動と呼ばれる変化をサンプリングパスに与え、新しいサンプリングパスを生成する。
そのため通常のパストレーシングや双方向パストレーシングに比べてレイトレーシングの回数が減り、同じサンプリングパスの本数を生成する場合であればより高速にレンダリングすることができる。




  • 最終更新:2014-05-23 15:01:02

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